この記事について
本記事は、2025年9月に社内向けに作成された技術資料をもとに再編集したものです。
掲載されている技術情報や仕様、価格などは当時の内容に基づいており、現在の状況とは異なる可能性があります。
ご利用の際は、各種公式ドキュメントにて最新情報をご確認のうえ、参考にしていただければ幸いです。
概要
顧客住所から天気情報を表示する要件があり、安価なAPIを調査・導入しましたが、精度に課題があり検討過程で得られた知見を共有します。
※今回の調査は、0からサービスを比較したものではなく、お客様から提案いただいたサービスが技術的に利用可能かを確認する目的で実施しました。
前提
- 費用を抑えるため、できるだけ安価なサービスを検討
- 顧客管理システム上での利用を想定していたため、不特定多数からの大量アクセスは発生しない想定
要件
以下の表示が必要
- 当日および翌日以降1週間、昨日の天候
- 降水確率
- 最高/最低気温
- 警報/注意報
天気取得の流れ
多くの天気APIは緯度・経度による指定を前提としているため、住所を緯度・経度に変換する処理が必要になります

天気予報API
Weather Data API | ・tenki.jp 等の日本気象協会が提供 ・月額32,000円以上 ・郵便番号から直接天気情報を取得できるため利便性が高い |
WxTech®︎ Data | ・weather newsが提供 ・天気予報APIを提供しているが、料金は公開されておらず要問い合わせ |
OpenWeatherMap | ・本社はロンドン? ・One Call APIは1000回/日は無料 ・超過分は従量課金($0.0015/回) |
Free Weather API | ・本社はUAE・ドバイ ・Freeプランもあるが、7日以降の予報を利用するにはStarterプラン(月額$7)が必要 ・最終的にはこちらを採用 |
かつて無料で利用できたWeather UndergroundやForecast(Forecast.io/Dark Sky)などもありましたが、現在は提供終了または有料化されています(いずれも海外サービス)。
※気象庁はREST形式の公式APIを提供していませんが、防災情報XMLなど機械判読可能な公式データ配信があります。
一方で、気象庁Webサイト内部で利用されている非公開エンドポイントを利用する事例も見られますが、これらはあくまで非公式です。
利用する場合は「政府標準利用規約」に準拠しているかを必ず確認してください。
参考:あんこエデュケーション – 気象庁のAPIと予報区のコード
https://anko.education/webapi/jma
OpenWeatherMapを一旦採用
項目 | 取得可否 |
天気 | 〇 |
降水確率 | 〇(昨日は降水量のみ) |
最高/最低気温 | 〇 |
警報/注意報 | 〇 |
- 提供API
- One Call API:天気・気温・警報などを取得可能
https://openweathermap.org/api/one-call-3#how - Geocoding API:郵便番号から緯度経度を取得可能
https://openweathermap.org/api/geocoding-api
(利用の流れ:Geocoding APIで郵便番号を緯度経度に変換し、その結果をOne Call APIで指定して情報を取得)
- One Call API:天気・気温・警報などを取得可能
- 採用理由
- 非常に安価であり、要件をすべて満たしていた
- Geocoding APIも無料で利用できる
- 課題
- 課題 ・天気予報の精度が十分ではなく、国内サービスと比較すると結果が大きく異なる場合があった(予報のため当たる場合もあるが、安定性に欠ける印象)
- Geocoding APIのデータが更新されていないのか、稀に郵便番号が一致せず結果が取得できないケースがあった
事前に公開記事などで予報精度に課題がある可能性は把握していましたが、実際の利用でも十分な精度が得られなかったため、最終的に採用を見送る判断をしました。
Free Weather APIを最終的に採用
項目 | 取得可否 |
天気 | 〇 |
降水確率 | 〇 |
最高/最低気温 | 〇 |
警報/注意報 | × |
- 採用理由
- Starterプラン(月額$7)で1週間分の天気予報が利用可能(リクエスト上限は公式プラン表に準拠)
- 天気および気温データの精度が比較的良好
- 課題
- 緯度・経度での指定が必要なため、Geocodingを別途利用する必要がある(地名指定も可能だが精度は低い)
- 降水確率は精度に課題がある(計算方法が日本の基準とは異なる可能性がある)
- 警報・注意報のエンドポイントは存在するが、日本国内のデータはサポート対象外
- 対応方針
- 基本データは Free Weather API を利用
- 降水確率は表示しない
- 警報・注意報はOpenWeatherMapで補完(日本の気象庁発表の警報・注意報を参照可能)
Google Maps Geocoding API
- 提供内容:郵便番号から緯度・経度を取得可能
- 採用理由:OpenWeatherMapのGeocoding APIより精度が高く、月10,000リクエストまでは無料で利用可能(超過分は従量課金:$5/1,000回)
- 注意点:郵便番号の最新情報は2025年8月更新版に基づく。
2025年9月に確認した限りでは、2024年度以降に新しく追加された郵便番号からも緯度経度を取得できたが、2025年8月末に追加された郵便番号は取得できなかったため、郵便番号の追加/変更が即時的にAPIに反映されるわけではない。 - 利用フロー:
Google Maps Geocoding APIで郵便番号を緯度・経度に変換 → Free Weather API / OpenWeatherMapで天気情報を取得
注意点と学び
- 多くの天気APIは緯度・経度を前提としているため、住所を緯度・経度に変換するGeocodingが別途必要となる
- 予報精度の観点では、国内サービスの利用が安定的で無難である可能性が高い(計算方法や基準が海外サービスと異なる場合があるため)
- API選定時には、料金や機能だけでなく、実際の利用に耐えうる精度やデータの取得可否を十分に検証することが重要