開発のアンチパターン再確認会

はじめに

本記事は、2023年2月に実施した社内勉強会資料の内容をもとに、社外向けに再編集したものです。
記載内容は当時の知見を整理したものであり、現在の仕様やベストプラクティスとは異なる可能性があります。
実装にあたっては、必ず最新の公式ドキュメントやガイドラインをご確認ください。

概要

今後の開発で失敗しないために、ありがちなアンチパターンを振り返り、学び直すための内容です。

目次

1.稼働中のシステムに定数を追加したい

稼働中のシステムにおいて、以下の定数に「専門学校」を追加する要件が発生したとします。
この場合、どのように対応するのが適切でしょうか?
また、避けるべきアンチパターンは何でしょうか?

定数
1: 中学校
2: 高校
3: 短大
4: 大学
5: 大学院

アンチパターンと対応策

考えてから開いてね!

←左が設計書に記載した定数  右がアンチパターン定数→

設計書記載定数実装定数
1: 中学校1: 中学校
2: 高校2: 高校
3: 短大3: 専門学校(新規追加)
4: 大学4: 短大
5: 大学院5: 大学
6: 専門学校(新規追加)6: 大学院

定数値が与えられているものに、新しい定数を差し込む形で実装されることが考えられます。

この実装でデプロイされてしまった場合、元々DBに登録のあった3〜5の値の意味が変わってしまいます。

問題点と解決策

  • 問題点:実装が想定通りにならない
    • 「定数上は6に追加、画面表示上は高校と短大の間に表示」と設計・記載していたものが、うまく開発者に伝わっていない
  • 解決策:開発指示を要件定義・設計書の共有のみで行うのではなく、必要に応じて開発者の理解度を確認する必要がある

  • 問題点:PRレビューを行っていない可能性がある
    • 忙しいことを理由にPRレビューを行わず本番実装されてしまうと、結局修正&リカバリーに工数がかかってしまう
  • 解決策:開発者から上がってきたPRを必ずレビューする

  • 問題点:要件定義時に組み込むべき内容が組み込まれていない
    • この一覧を見て、「専門学校」が追加されるのは予想できた
  • 解決策:要件定義の段階で漏れがないよう、必要であれば開発チーム全体で意見を交換しながら洗い出しを行う

2.APIのカラム名を変更したい

APIのレスポンスデータで、フルネームを「姓」と「名」に分割したいという要件があるとします。
ただし、このAPIはすでに外部システムやスマホアプリで利用されている前提です。
(自社サーバーのみで利用している状況ではありません。)

この場合、どのように対応するのが適切でしょうか?
また、避けるべきアンチパターンは何でしょうか?

●今のレスポンスデータ

{
	"name": "山田太郎"
}

●変更したいレスポンスデータ

{
	"last_name" : "山田",
	"first_name": "太郎"
}

アンチパターンと対応策

考えてから開いてね!

上記のように name を単純に last_namefirst_name に分割してしまうのは、アンチパターンといえます。

その理由は以下のとおりです。

  • APIの仕様が変更されると、利用している外部システム側でも同時に対応が必要になる
  • スマホアプリの場合、APIの更新にあわせてアプリのアップデートを必須にできるものの、更新のたびに利用者にアップデートを強いるのはユーザビリティ上望ましくない

API開発の場合、API利用側の立場で考えることが、良い設計につながると考えます。

理想的な対応方法

1.カラム名は置き換えるのではなく、追加をする。

name カラムを残したまま last_namefirst_name を追加すれば、既存の利用者に影響を与えずに移行できる。
特に制約がない場合はもっとも手軽な方法。

ただし、管理項目が増える、通信データ量が増えるというデメリットもある。
特に利用者側がスマホアプリだと少しでも通信量は減らしたい。

{
	"name": "山田太郎",
	"last_name" : "山田",
	"first_name": "太郎"
}

2.URLを分ける

旧仕様(v1)と新仕様(v2)のエンドポイントを分けることで、両方の利用を可能にする。
外部システムやスマホアプリは移行のタイミングで v1 から v2 へ切り替えればよい。
あらかじめ v1 のアクセス期限を設定しておくことで、 v1 の切り捨てが可能。

<https://hogehoge/v1/name>
{
	"name": "山田太郎"
}
<https://hogehoge/v2/name>
{
	"last_name" : "山田",
	"first_name": "太郎"
}

3.共通のファイルに全部書く

  • base.jsに個別画面の処理を書いてしまう
    • 本来は全体で読み込むファイルであるにもかかわらず、特定画面でしか使用しない処理が含まれてしまう
  • profile.jsにlife画面用の処理を書いてしまう
    • ファイル名と実際の用途が一致せず、可読性や保守性が低下してしまう

対応策

  • 全体で読み込むファイルには共通処理のみを記載する
  • 特定画面でしか利用しない処理はファイルを分けて個別に読み込む
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