通る新規事業の企画書の考え方|パワーポイント資料作成(テンプレートも紹介)、プレゼンまでの要点まとめ

今回は、通る新規事業企画書の内容の考え方や書き方、パワーポイントのテンプレート、相手を動かすプレゼン方法まで紹介します。
新規事業開発をスタートさせるためには社長や役員などの経営層の決済をもらわなければなりません。
その時に重要視されるのが新規事業企画書のプレゼンです。
新規事業のアイデア発想方法から、それを企画書に落とし込み、プレゼンし、企画を通すまでのポイントを解説します。

なお、今回は起業する時の資金の融資を得るための新規事業計画書ではなく、社内の承認を得るための新規事業企画書(提案書)について説明します。

目次

どうやって新規事業を思いつくか?

いざ新規事業のアイデアを出そうと思って、机に座ってウンウン唸っても、なかなか出るものではありません。
日々の何気ない日常にアイデアは眠っていますので、アンテナを広げる意識が大事です。
ここでは、新規事業のアイデアを思いつくための方法を紹介します。

情報のインプット

新規事業のアイデアを思いつくために意識したいのは情報のインプットです。
意識的にアンテナをはってキャッチしたことはメモしておきましょう。

基本は自社の事業の中で経営理念やビジョンを達成するために、既存の事業がどのようにアクションを起こしていて、顧客にどう評価されているのかをみていきます。
既存事業の構造をみることで、既存事業では対応できていないところはないかなどをメモします。

自社の事業で対応できていないところを見つけるうえで、顧客の生の声は非常に参考になります。
顧客対応や苦情案件にも注意しておきます。
顧客の声を聞くためにアンケートや市場調査を実施するケースもあります。

同業他社を含む業界全体のトレンドにも目を配ります。
現在の状況から、将来に向けての展望をメモします。同じ業種はもちろんのこと、他業種の情報も仕入れるべきで、たとえば、成長企業や海外で成功している事業についても注目します。

情報のインプットのために活用するツールには新聞、通勤電車のつり革広告、CM、ネット広告、ネット記事、などを活用し、常にインプットを心がけます。

情報のアウトプット

インプットした情報から新規事業のアイデアを思いつくためには、情報に対する自分の考えを持つことが大事です。
情報のインプットでメモした内容は「誰に使ってもらっているか」「どんな特徴があるか」「他社との差別化はどこか」という3点をポイントをスパイラル状に頭の中で回しながら考えることを継続すると新規事業に結びつくアイデアが出やすくなります。

さらに、インプットした情報に対する自分の考えをアウトプットすることで、情報が整理できる事が多いので、SNSに投稿したり、同僚に話したりしていきます。

既存アイデアの掛け合わせが多い

新規事業のアイデアを思いつくために今までに無いアイデアを考えることは発明並みに難しい事は確かです。
新規事業は既存のアイデアの掛け合わせであることが多いので、インプット・アウトプットしながら蓄えた情報の中から、情報を掛け合わすことで新規事業にならないか考えることも良い方法です。

より具体的な新規事業のアイデアの考え方を以下の記事にまとめました。
よろしければこちらも参考にしてください。

思いついたアイデアを分析・具体化する

新規事業のアイデアをより明確に分析・具体化するためにはマーケティングフレームワークを用いると良いです。
ここでは代表的なものを紹介します。

アイデアの具体化

アイデアの具体化には「5W1H」というマーケティングフレームワークが良く使われます。
5W1Hは、When(いつ)、Where(どこで)、Who(だれが)、What(なにを)、Why(なぜ)、How(どのようにして)という問いを巡回させて、アイデアの具体化をはかるフレームワークです。
5W1Hは、シンプルでいつでも簡単に使えるフレームワークで、新規事業立ち上げのアイデア出しの場面でも常に意識して使うツールです。

市場調査

市場調査をもとにアイデアを分析するときによく使われるのが「3C分析」です。
3C分析は、市場調査の分析で必要な3つの要素である「顧客」「競合他社」「自社」を対象に分析を行なうマーケティングフレームワークです。
戦略を練るためには、相手を知ることが重要です。

3C分析では、以下の3つの基準で分析を行ないます。

Customer(顧客)

市場を形成する顧客のニーズ、トレンド、市場規模、これからの市場成長性など

Competitor(競合)

競合企業、競合企業の商品・サービス、競合他社の市場シェア、競合企業の拠点数・エリアなど

Company(自社)

自社のブランドイメージ、自社の商品・サービス、自社の職員など

サービス構築

サービス構築を念頭にアイデアを分析するときによく使われるのが「4C分析と4P分析」です。

「4C分析」は、マーケティングにおいてよく使われるフレームワークで、視点を顧客側において分析を行ないます。
以下の4つの項目で、商品やサービスを分析します。

顧客価値(Customer Value)

顧客はどのような価値を得るか?

経費(Cost)

顧客はどのくらいの費用と時間を費やすか?

顧客利便性(Convenience)

顧客の利便性は?

コミュニケーション(Communication)

顧客からの声は企業に届いているか?

「4P分析」は4C分析と並び、マーケティングにおいてよく使われるフレームワークです。視点を企業側において分析を行ないます。以下の4つの項目で、商品やサービスを分析します。

製品(Product)

どんな商品やサービスを提供するか?

価格(Price)

どのくらいの価格で売るか?

流通(Place)

どの流通を使うか?

販促(Promotion)

どのように販促していくか?

他にもアイデアの具体化、市場調査、サービス構築に利用できる様々なフレームワークが存在します。
以下の記事でフレームワークを全てまとめていますので、利用しやすいものを探してみてください。

通る企画書の内容

通る新規事業企画書の内容を考えるときの前提は、既存ビジネスと新規ビジネスの違いです。
既存ビジネスでは今までの経験がありますが、新規ビジネスでは今までの経験がありません。

既存事業でつくられる事業計画書は事業としての経験値がありますが、新規事業企画書は、経験値が存在しませんので、それに代わる信憑性を説明する客観的なデータや分析などが重要になります。
新規事業をスタートして、事業として継続して成り立つかどうかの説明が必要なのです。

新規事業プレゼンで必ず伝えるべきこと

新規事業企画書を作成する際に最も重要な点は、「社内の承認を得るため」に作成するするという点です。
新規事業の決済は多くの場合社長や役員になりますので、経営者側の立場に立って決済のために必要な内容を盛り込まなければなりません。
具体的には、社内の承認を得るために下記の内容が重要となります。

プロダクトは何か?

まず、伝えるべきことは、ユーザーに何を提供するかです。
プレゼンの冒頭で話しますが、ここでは深くは話さず、どんなユーザーに何を届けるかを分かりやすく伝えます。

立案に至る背景

次にその新規事業の立案に至る経緯(背景)を伝えます。自社の課題からの分析によって生まれた解決案なのか、近年の社会の課題を自社の強みで解決できると考えての立案なのか、Whyの部分を伝えることで、聴く人の共感や興味を惹きます。

立ち上げによる効果

実際に新規事業を推進することで、どれほどの利益が生まれるか、新規事業立ち上げによる効果、メリットを伝えます。すでに市場が開拓されていて競合がいる中での新規事業の場合は、市場規模の推移やその他利益を推測するに有効なデータ(数字)があると、よりプレゼンの説得力が増します。

その他、ターゲットとする顧客ニーズの存在や、自社が市場の中で収益を得られるポジションの提示、自社が顧客ニーズを満たす商品やサービスを提供できる理由などを記載します。

投資コストがどのくらいかかり、自社の財政に問題を起こすことはないか、新事業で販売される自社の商品やサービスはどれくらい売れる見込みなのか、またその理由は何かなどを記載し、予測損益計算書を作成します。

リスクについて

新規事業は既存事業と異なり、経験値がないわけですから、リスクは重要な判断材料になります。
新規事業企画書には、リスク精査を実施したうえでの新規事業の提案であることが分かるように記載します。

実現方法とそのプロセス

・誰に何を届けるのか?

・新規事業の背景

・新規事業の効果

・リスクについて

以上の流れで伝えた後は、どのようにこのプロダクトを実現するのかをなるべく詳細に伝えます。サービスや商品のプロダクトの実現に必要な費用はお伝えしているので、実際どのような人材が必要なのか、社内だけで実現できるのか、パートナー企業の協力が必要なのか、そのネットワークの構築は可能なのかを伝えます。

反対意見の想定と回答の準備

予め想定可能な反対意見を挙げておき、その回答を準備します。

例えば、新規事業が今までにないプロダクトで競合他社もやってこなかった事業の場合、なぜ自社がやるのかについては納得いく回答を用意しておいた方が良いでしょう。

競合他社が先行して開拓を進めている市場であれば、なぜ自社ができるのかは回答を求められるでしょう。

そして、企業には企業理念やミッションがあり、強みと弱みがあります。それらをしっかり認識しそれに則した回答をすることで聞き手の納得のいく答えを導くことができるでしょう。

通る企画書の作り方とプレゼン方法

プレゼンは主役が自分(話し手)だと思いがちですが、相手(聞き手)が主役です。
新規事業企画のプレゼンの場合、聞き手は社長や役員といった経営陣です。
重要なのは聞き手にとっての価値のある企画を、聞き手にとって分かりやすい内容や話し方を心がけてプレゼンすることです。
ここでは、プレゼンの基本形に沿って、通るプレゼンテーションの仕方を解説します。

プレゼンの基本形

プレゼンの基本形は、聞き手が行動を促せるように考えられた型です。
プレゼンの基本形に沿ってプレゼンを行なうことで、聞き手の行動(新規事業企画のプレゼンの場合、社長や役員といった経営陣の了承)につながりやすくなります。

  1. 導入
  2. 要点
  3. 詳細の前振り
  4. 詳細
  5. 詳細の振り返り
  6. 要点の振り返り
  7. 具体案

1.導入

導入では、自己紹介や周辺の話題(昨今の〇〇業界はこのような状況にあり〜)、プレゼンの目的や理由を説明します。

2.要点

要点では、新規事業を行なうことの自社や顧客にとっての価値を伝えます。
ここでは、事業概要、新規事業の価値、メリットだけではなく、顧客が満足する点や企業が得られるベネフィット(利益)を伝えることがポイントです。

3.詳細の前振り

新規事業について詳細に話していく前に、これから話す内容について、数量と概要を伝えます。

(例)「AとBとCの3点についてお話します」

詳細の前振りを行なうことで、聞き手がどこにポイントを置けばいいのか、これから何の話が始めるのかといった準備と整理をすることができ、次に聞くことになる詳細の内容を理解しやすくなります。

4.詳細

詳細の説明では、複数の項目について「漏れ・ダブリが無く全体を網羅」「レベル感を一致」を意識した構成で、MECEという理論を活用します。

MECEの活用

MECEとは、英語のMutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字をとったもので、「漏れ・ダブリが無い」という用語です。
プレゼンでは違う表現でも同様の意味の言葉は使わないようにします。

たとえば、完全に要素が分解できる単語がダブっていたり、時系列を表す言葉のレベル感が違う表現を避けます。

要素分解

「ヒト」「モノ」「カネ」「商品」という表現では「モノ」と「商品」がダブルので分かりにくくなってしまいます。

時系列

「過去」「現在」「明日」という表現では「明日」だけレベル感が違うのでプレゼンでは避ける必要があります、

対称概念(お互いに補完しあう関係)

対称概念とは課題要素を相反する性質、たとえば「質と量」「固定と変動」「メリットとデメリット」のように分けることで、プレゼンが分かりやすくなります。

手軽に内容を作る4つのステップ

詳細の内容を考えるときに手軽に内容を作る4つのステップがあります。
付箋を使って作業をすすめていくことで、効率的に考えをまとめることができます。

発散

付箋等に伝えたい内容をどんどん書き出していきます。

集約

書き出した付箋を似ている内容や重複している内容でグループ分けします。

要約

グループ分けした複数の付箋の内容を一言(短い文章)で要約します。

選択

一言にまとめた内容を比較・分析して、聞き手にとっての重要度・優先度をつけて選択していきます。
選択する際には、MECEの考え方を適用して、漏れ・ダブり無く網羅し、レベル感が統一されていることを注視します。
まとめた内容は多くても5つまで選択します。

論理で納得させ、物語で共感させる

プレゼンの詳細を話す時のテクニックのひとつですが、理論で納得させ、物語で共感させるという手法があります。
データや統計など数値を交えた理論で聞き手の頭で納得させて、物語(事例や口コミ)で共感せて心を動かすというものです。

5.詳細の振り返り

詳細のプレゼンが終わったところで、プレゼンの全体を改めて示します。
振り返りによってで聞き手の理解を深めることができます。

(例)「AとBとCの3点についてお話しました」

6.要点の振り返り

詳細の振り返りが終わったら、もう一度もっとも伝えたかった「2.要点」で話した内容を繰り返して伝えます。
ここではと「2.要点」で話した内容と同じ内容で構いません。
詳細と要点は、大事な内容ですので2回伝えることで理解を深めることが重要です。

7.具体案

プレゼンの目的は聞き手の行動(新規事業企画のプレゼンの場合、社長や役員といった経営陣の了承)に結びつけることです。
一般的にプレゼンを聞いたからといって、聞き手のほうから行動を起こすことは稀です。
人は動きたがらないので具体案を示すことが必要になります。
プレゼンの結果、望むべき行動に結びつきそうもない場合は、ハードルの低い行動を促して いくことも大切です。

インパクトの残るプレゼン

通るプレゼンの仕方にはインパクトも重要です。
プレゼンにインパクトを加えるためには次の3つの点に注目します。

具体的な数字を出す

新規事業企画書のプレゼンでは、市場調査や各種統計、予測損益計算書など、数値を示したプレゼンは当然ですが、すべての項目について具体的な数値を出すことが重要です。

演出

インパクトに残るプレゼンには演出も効果的です。
プレゼンの場面で実際に体験してもらう機会や実演することも重要です。
大きさや量をあらわすときにジェスチャーを交えて話すことも効果があります。

物語

プレゼンでは理論だけでなく、心に訴える内容も必要です。
たとえば新規所業をやらなければ「ユーザーはどうなるのか?」「自社はどうなるのか?」といった表現の仕方も大切です。

伝わるスライド

通るプレゼンのためには、視覚に訴えるスライドも重要な役割を持っています。
ここでは伝わるスライドを作るポイントを解説します。

ワンスライド・ワンメッセージ

スライドには伝えたいことをたくさん載せたいところですが、プレゼンで聞き手に伝わるスライドは1スライドにつき伝えたいことは1つといわれています。
そのかわり、スライドは何枚になっても問題はありません。
目安として1スライド1分くらいしゃべるのが最適です。
詳細なデータについては、資料(Appendix)として別に用意すればよいのです。

シンプルに伝える

ワンスライド・ワンメッセージにもつながりますが、スライドは見た目も分かりやすくシンプルな構成で作成し、シンプルに伝えます。

事実ではなくメッセージを伝える

スライドには資料をみれば分かる事実を記載するというイメージではなく、いかに心に響くかを考えて、メッセージになることを心がけて作成します。

事前に質問を予想し回答を準備しておく

通るプレゼンを考える場合、事前に質問を予想し回答を準備しておくことは、必ずやらなければならないことです。
新規事業企画書のプレゼンでは、社長や役員といった経営陣から経営者としての視点で質問が飛んできます。

事前に準備しておくことで慌てることがなくなり、質問に的確に回答していくことで信頼を得られることになります。

その他、もっと詳しいプレゼン成功の秘訣は以下の本に詳しく説明されていますので、プレゼンに自信の無い方は目を通してみると良いでしょう。

新規事業企画書のパワーポイントテンプレート

マイクロソフトが日経ビジネスオンラインと共同企画した企画書のパワーポイントテンプレートを紹介します。

上記で紹介した本を参考にしながら、このパワーポイントのテンプレートで新規事業の企画書を作成すると良いでしょう。

マイクロソフトが日経ビジネスオンラインと共同企画した企画書のパワーポイントテンプレートはこちら

まとめ

・新規事業のアイデアは情報のインプット、アウトプット、掛け合わせで考える

・新規事業のアイデアを分析・具体化するためには「5W1H」「3C分析」「4C分析」「4P分析」などのマーケティングフレームワークを用いると良い

・新規事業企画書を作成する際に最重要な点は、「社内の承認を得るため」に作成するするという点

・プレゼンは主役が自分(話し手)だと思いがちだが、聞き手が主役である

・新規事業企画書が通るプレゼンにはプレゼンの基本形に沿ったプレゼンや、インパクト、伝わるスライドが必要である。

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